聖書箇所:列王記上8:22~30 説教題:「ソロモンの偉大な祈り」
岩橋隆二
まもなく71回目の終戦記念日を迎えます。あの忌まわしい4年近くも続いた太平洋戦争が終った後は、殆どの日本人が衣食住に困難が伴った時代がありました。しかし、戦後私たちの国日本は、奇蹟と言われる戦後復興を成し遂げ、物質的にとても豊かな国になりました。けれども、その物質文明、物質第一主義の考えは行きつくところ、人間にとって一番大切な心の問題をなおざりにする結果となりました。私たちの周りには、信じられないほど日常的に殺人が行われています。イザヤ・ペンダサンが「ユダヤ人と日本人」という本の中で、日本は安全と水はただ、だと書いておりましたが、遠い昔の話になりました。私たちは神様の存在をしっかりと心の中に持ち続けなければ、この世に生れてきた意味や生きて行く意義を見つけ出すことは出来ません。万物を創造された神様のことを覚えながら、混沌とした世界情勢の中であれば尚更、神様の声を聞いていかなければ正しい道を歩いていくことは出来ないのです。
列王記は、サムエル記に続くイスラエルの歴史を伝えています。すなわち、ソロモンの治世から彼の死後、王国が分裂し、北イスラエルがアッシリアに捕囚となり(前721年)、南ユダがバビロニアに捕囚となるまで(前586年)、およそ四百年にわたる南北両王国の盛衰記です。今日の聖書箇所からは、ソロモンの統治力の下、イスラエルの領土拡大と国力において絶頂期を迎えた姿を見ることができます。ダビデの統治時より5倍に広がった領土と貢物がありました。その上に、ソロモンがエルサレムに建築した神殿によってイスラエルは霊的なかがやきを現わします。しかし、ソロモンの人生の後半部になると、彼の聖なる情熱が冷め、イスラエルが分裂王国へと向かいます。ソロモンは「主イエスを除いて最も知恵ある人」と言われています。一千首以上の歌を作り、詩篇127篇の著者でもあり、哲学と動・植物学に関する彼の博学さは、哲人政治の典型を示します。その上、彼の名は「平和を好む」という意味で、彼は平和の王と呼ばれます。しかし、彼は人生の晩年に神殿建築家から、偶像礼拝者で労働力搾取者に変貌し、最も知恵のある人から愚かな人に転落します。その結果、後世に王国分裂の禍根を残してしまいます。
ソロモンが残した最も大きな遺産は神殿です。神殿建築を願った人はダビデでしたが、彼はとても多くの血を流したので、神が禁じられました(歴代誌上28:3)。それでその任務は平和の王であるソロモンにゆだねられました。神殿建築は、ソロモン王着位4年になる年(前966年)に始まり、7年後に完工しました(6:1~38)。ソロモンは、古代ダビデの町の北にあるモリヤ山の上に神殿を建設しました。しかし、宮殿を含む建築計画が全て完了するまでには13年の歳月を要したと記されています。
ソロモンは、イスラエルの全集団の前で祭壇の前に立ち、神に祈ります。まず神の偉大さをほめたたえ、自分が経験した神を告白し、賛美しています。そして、人間の弱さを告白し、罪を犯すたびに神殿でささげる祈りを聞いて、赦してくださるよう求めます。彼は神の契約への真実性を根拠に、父ダビデとの契約の残りの部分も確実に守ってくださるよう神に求めました。神のご性質と神の約束に基づいた祈りは必ず答えられます。