私たちの教会では、週報の礼拝プログラムに「教会暦(れき)」を載せるようになりました。始まりは11月30日(第5主日)の「待降節第1主日」からです。そのようなことで、キリスト教暦の知識を共有すべく、今橋朗著『よくわかるキリスト教の暦』(キリスト新聞社)より抜粋(pp.7~10)し、下記に大まかに記します。
■キリスト教の暦の特色
地球上に住む限り、宇宙の法則性の中にあり、季節という自然の周期の中で生きているわけですが、キリスト教がその前身であるユダヤ教から受け継いだ信仰は、他民族のように日や月や星を拝むことはしません。なぜならば、宇宙・天体もその法則性も神が造られたものだ、と信じるからです。一方、唯一で全能なその神は、自然だけではなく、世界と人間の歴史に働きかけ、導いていく神です。したがって、毎年めぐってくる季節の恵みだけでなく、かつて一回限り起こった歴史的な出来事の中に神の恵みと意志を知るのです。イスラエル人のエジプトからの解放も、ユダヤ国家の滅亡も、バビロン捕囚も、イエスの誕生・死・復活もそうです。それらはどうしても記憶され、伝承されねばならない神の出来事でした。放置しておけば時間の流れの中で、風化し忘れ去られてしまいます。そこで教会は、循環する自然暦の中に、神の歴史の出来事を配置することにしたのです。このようにして、教会(キリスト教共同体)は聖書に記されているキリストの重要なテーマを、1年という周期に割り振ったのです。後に、聖書だけでなく教会の経験したさまざまな出来事も加えましたが、本来は聖書の記事を1年がかりでたどり直すことです。
■聖書日課
そこで、大切なことは、1年の中の何月何日(特に礼拝が行われる日曜日)に、聖書のどの記事を配置するかということです。その場合、歴史的に証明しやすい出来事は、振り当てやすいのです。例えば、キリストの死や復活、聖霊降臨の出来事は、すでに存在していたユダヤ教の暦との関連上、比較的容易に、早い時期に確定しました。つまり、キリストの死は過越祭、聖霊降臨は五旬祭の日であった、と新約聖書そのものに書かれているからです。このようにして、徐々に形造られていったのがキリスト教暦と不可分の関係にある「聖書朗読日課」です。特定された日に、特定の聖書箇所を読み、そのテーマや内容を記念する行為が行われるのは、教会の礼拝においてですから、それを「教会暦」または「典礼暦年」と呼びます。この場合、記念というのは単に過去の出来事をふり返るだけでなく、それが現在持っている意義を現実化し、さらに将来に向かっての方向づけをする、という意味です。このように過去・現在・未来を貫く神の存在と働きに触れるのが、記念(ギリシャ語でアナムネーシス)という信仰の態度です。
■キリスト教の暦の広がり
本来、聖書の記事の記念であったものが、いろいろな時代に、さまざまな文化と接触し、互いに影響を与え合ってきています。従来、キリスト教とは無縁であった日本の歳時記の中にも、すでにクリスマス、バレンタイン、母の日、ハローウィーンなどが入ってきています。逆に日本の教会では年間行事として七五三の幼児祝福式や、彼岸の頃に墓前礼拝や永眠者記念礼拝を行う例も増えています。
2014年10月26日 岩橋隆二牧師