【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2022年8月7日説教要旨
聖書箇所 詩編130編 1節~8節
クリスチャン―朝を待つ人々
片山 寛
今朝は、終末論のお話しをします。終末論というと、「世の終わり」(eschaton)を待つということですので、何となく暗いイメージを持つ人が多いのですが、キリスト教の終末論はむしろ、明るいイメージであります。今の方がよほど暗い。この世界は、人間の闇に閉ざされて暗いのですが、神の国ではその闇が吹き払われて、明るいのです。クリスチャンは、朝を待つ人々なのであります。次のような物語があります。
巡礼者
ある美しい城に――今はもう廃墟になって久しく、「一つの石もここで崩されずに他の石の上に残っていない」(マタイ24:2)のですが――むかしむかし、お金持ちの騎士が住んでいました。騎士は自分の城を豪華に飾りつけるのにお金を費やしましたが、貧しい人々に善行をすることはありませんでした。
さてある日、このお城に一人の貧しい巡礼者がやってきて、一夜の宿を乞いました。
騎士は巡礼者を無愛想にはねつけて、「この城は宿屋じゃないぞ」と言いました。
巡礼者は言いました。「三つだけ質問させてください。そうすれば私はよそへ行きます。」
騎士は言いました。「その約束を守るなら、質問してよろしい。喜んで答えよう。」
巡礼者は質問しました。「あなたの以前にこの城に住んでいたのはどなたですか。」
「私の父だ」と騎士は言いました。
「お父さまの前にここに住んでいたのはどなたでしょうか。」
「私の祖父だ」と騎士は答えました。
「ではあなたの後でここにお住まいになるのはどなたでしょう」、と巡礼者はなおもたずねました。
「神がお許しになるなら、私の息子だ。」
巡礼者は言いました。「もし誰もが、ほんの一時期しかこの城に住んでなくて、常に交代してゆくのでしたら、あなたもここではお客に他ならないのではありませんか。この城は、だとしたら、実はひとつの宿屋なのです。ほんのわずかな間のお宿に過ぎないこの家を豪華に飾りつけるのにお金を費やすのをおやめなさい。むしろ、貧しい人々に善行をするのです。そうすればあなたは、天に長く住まう場所を得られます。」
騎士の心にこの言葉は深く届きました。彼は巡礼者に宿を提供し、それからは貧しい人々に慈善を施すようになりました。
Kurzgeschichten II, 216