【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2022年11月6日説教要旨
聖書箇所 マルコ福音書6章30節~34節
主イエスの心
梅木 光男
本日の聖書箇所は使徒たちがそれぞれ福音宣教の業を終えて、イエスの元に帰ってきたところから始まっています。初めての福音宣教の経験で緊張や不安、恵みなどやっとの思いで戻ってきたことでしょう。主イエスはそうした弟子たちの疲れを知って「人里離れたところでしばらく休むように」命じられました。多くの群衆が押し寄せて恐らく食事も満足にとる余裕もなかったことをご存知だったことでしょう。それは「あなた方だけで」という表現が端的に表しています。
主イエスの周りには取税人や病気の人、障がい者、借金を抱えて苦しんでいる人など社会から見放されて不安と希望もなく生きる気力さえ失くした人々の群れが集まっていました。当時の指導者たちは自分自身や仲間のみの利益を優先し、社会的弱者と言われる人々の苦しみには無関心であるばかりか「罪人」という烙印を押して差別していました。
主イエスはこのような状況を「飼い主のいない羊のような有様」として深い憐れみを示されたのです。主の憐れみとは「胸の締め付けられる思い、気の毒でじっとしていられない思い」のことで、まさに主イエスの愛の原点そのものです。弟子たちと共に「神の国の実現」のために福音宣教の業に邁進して中で、厳しい状況に置かれた群衆は弱さと無力、社会から捨てられた思いで一途に主イエスを追い求めていたのです。
この後有名な5つのパンと2匹の魚の奇跡が語られています。すべての福音書に記されており、特にマルコ福音書8章でも同様な記事をわざわざ記しています。空腹の群衆を目の前にして主イエスは弟子たちに「まずあなたたちの持っているものを与えなさい」と現実的な問題を提起しそこにあったパン5つと魚2匹の7つ(完全数)をもって「天を仰いで賛美の祈り」により奇跡は実行されたのです。ここに主イエスご自身が人々の罪の贖いのために十字架にかかり復活するという神の愛を予兆されています。愛は他者の痛みを感じとる思いから出発するのではないでしょうか。
さあ私たちも神様から示された2つの戒めを実行していきたいと思います。