【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2021年11月21日説教要旨
聖書箇所 マルコ福音書2章13節~17節
主イエスの招き
梅木 光男
本日の聖書箇所は共観福音書全てに記されている有名な話です。主イエスがガリラヤ地方から福音宣教を開始し、多忙を極めていた状況のなかで中風の人の癒し物語に続き取税人レビの召命です。
当時ユダヤはローマ帝国の直轄領の一つでありローマ帝国への税金を納める必要があったのです。ローマ帝国は直接税金を取るのではなく徴収請負人を任命してその業務を委託するという巧妙な仕組みを作っていました。つまり一定額の税金を納めればある程度自由裁量権のある制度でした。その収税所にレビがいたのです。取税人はイスラエルの民からは憎しみ、軽蔑、差別、疎外の眼差しにさらされていました。それは律法を知らない不浄な異邦人ローマ帝国の手先きとなって、自国民から税金を取り立てていたこと、また、しばしば本来徴収すべき額を超えて取り立てて私腹を肥やしていたからです。
主イエスはこの被差別者であるレビに向かって「私に従って来なさい」と招かれたのです。するとレビは即座に反応して自分の家に招き食事の席を設けたと聖書は記しています。多くの群衆が注目している中でパリサイ派の人や律法学者たちは「なぜ罪人と食事をするのか」とつぶやくのです。これに対して主イエスは誰にでもわかる有名な格言で答えられます。しかもそれに主イエスは独自の言葉を付加されて。それは「私が来たのは正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである」と。これはまさにキリスト(メシア)としてのイエスの行動や律法全体を総括している言葉です。自分だけが正しいと自惚れている律法学者やパリサイ派は拠り所としている律法を遵守するあまり他者を差別し排除して自分だけの世界に閉じこもっている悔い改めるべき存在でした。彼らから疎外された取税人や罪人と称された人々との食卓で主イエスは彼らに真実の命への祝福を与えられ、そこに溢れている喜びと平安と神との交わりによって取税人レビはほんとの生きる意味を新たに実感したことでしょう。我々も主イエスからの招きに躊躇なく従いましょう!