【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2025年8月24日説教要旨
聖書箇所 ルカによる福音書12章29節以下
恐れるな 小さな群れよ
原田 寛
ルカ福音書は、異邦人伝道を行った使徒パウロに同行・協力したルカによりローマ帝国の高官に献呈された書物でした。献呈された人は、どのように福音書を読んだのでしょうか。
○「あなたがたも、何を食べようか、何を飲もうかと考えてはならない。また、思い悩むな。」
- ① 旧約聖書(律法)では、食べてはならない汚れた動物が記されています。しかし、福音が説かれていく中、「主イエスの死によって律法は廃棄された」「律法によって生きるのではなく、信仰によって生きる」と言われるようになりました。したがって、律法によって定められていた食物規定はなくなり、主イエスにあって用意される食卓に着くことができるということです。
- ② キリスト教会には食べることに困窮していた人々がいました。キリスト教会は、裕福な人たちが持ち物を持ち寄って共同生活を可能にし、それを推進したことによって、多くの人々が救われたのでした。
○「神の国を求めなさい」
神の国は、救い主イエス・キリストを信じる信仰をもつものに等しく用意されています。「神の国を求める」ということは、神の御言葉に聴き、主イエス・キリストに従いつつ歩むことが求められているということです。たとえば、主イエスは「隣人を自分のように愛しなさい」と教えます。聴く者は、隣人を愛することを求められますが同時に隣人として愛されることが与えられます。この関係には、ユダヤ人も異邦人もなく、奴隷も自由人もありません。
キリスト教会は、神の国を求める人の群れということです。
○「恐れるな、小さな群れよ。神は喜んで神の国を・・・」
主イエスは、「恐れるな小さな群れよ。あなたがたの父は喜んで神の国をくださる」と伝えました。主イエスの周りには「地の民(アム・ハ・アーレツ)」と呼ばれるイスラエルの数に加えられない人々が集まっていたと言われます。彼らは、田舎者、律法を守らないもの、愚か者、いろいろな意味で語られ、差別されてきた人々です。彼らのことが、父なる神に覚えられているということですし、主イエスの福音は、そのような人々にも伝えられていたのです。
ルカ福音書が記された時代では、キリスト教会は、ユダヤ教からもローマ帝国からも迫害される中にありました。行き場のない恐れをいだく人々もいたのではないでしょうか。しかし、ルカは、信じる神の為し給うことを希望して、「恐れるな」と主の言葉を伝えます。主イエスの聖名によって拡大してきたキリスト教会は、強い逆風が吹く中でも信じる者たちが現状を忍耐しつつ集まっていました。
○「・・・擦り切れることのない財布を作り、尽きることのない富を天に積みなさい。」
キリスト教会に集う者たちは、神の国を求めて待ちます。教会に集う貧しい人々に富む人たちが施しをするという構図がありますが、それは教会の目的を果たしながら、お互いを認めながら、進んでいくことです。教会は、主の御言葉に「時が良くても悪くても、御言葉を宣べ伝えなさい」「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく・・・地の果てに至るまでわたしの、証人となる」と教えられます。教会の目的に合う歩みは、擦り切れない財布に尽きることのない富を蓄えることになります。