2017年12月31日説教 「粉は尽きず」 聖書箇所:列王記上 17章8節~16節
列王記は上下2巻に分かれていますが、これは70人訳以来のことです。もとは一書でありました。文語訳聖書では列王紀ですが今は列王記となっています。
漢和辞典を見ると名詞「紀」には“順序よく、または年を追って書きしるした書、また、歴史書の帝王に関する記述”という意味です。名詞の「記」は紀の同義語で記録や文書の意味です。
列王記(上下)は、ダビデ王の晩年を含めてソロモンの即位(紀元前965年頃)から、ユダ王国の滅亡(紀元前587年)及びユダの王エホヤキンがバビロンの獄屋から釈放されるまで(紀元前562年)の約4百年に亙る南のユダ王国、北のイスラエル王国の興亡の歴史です。列王記は南北両王国の滅亡とバビロン捕囚を経験した信仰深い歴史家が、カナン定住以来のユダヤ民族の歴史と王国の興亡盛衰を信仰を持って記したものであります。
ソロモンの死後、彼の王国は二つに分裂しました。北の10部族はイスラエル王国となり、南の2部族(ユダとベニヤミン族)はユダ王国となりました。ユダヤ民族の南北朝時代です。日本の歴史の南北朝時代に似て、南は小でしたが比較的清く、北は大でありましたが反逆が堪えませんでした。
ダビデの血統と信仰とは南朝により伝えられました。キリストの先祖として記されるレハベアムよりエコニアに至るまですべて南朝の王でした(マタイ1:7-12)。これに反してヤラベアムがソロモンに背いて北の王となってから、9人の反逆者が王位に就きました。北王国は立国以来220年にしてアッシリア人の滅ぼすところとなり、実に憐れむべき歴史でありました。
しかし神は彼らを忘れたまいませんでした。たびたび彼らの間に預言者を送って彼らを教え戒め導きたまいました。その中に有名なエリヤとエリシャがいました。またアモスとホセアがいました。今朝のお話はエリヤの業績の記事です。エリヤの記事は列王記(上)17章から同(下)の2章までに記される長いもので旧約聖書中最も面白いものです。漢詩はこの箇所から作詩しました。
漢詩 撒拉大之母子 ザレパテの母子(ぼし)
寡妻嗣子涙沾巾 寡妻(かさい) 嗣子(しし) 涙(なみだ) 巾(きん)を沾(うる)おす
麥粉纔持落魄身 麥粉(ばくふん)纔(わず)かに持(も)つのみにて 落魄(らくはく)の身(み)なり
言有捧全諉主汝 言(げん)有(あ)り 全(すべ)てを捧(ささ)げ 汝(なんじ)を主(しゅ)に諉(ゆだ)ねよと
天來糧足一家春 天来(てんらい)の糧(かて) 足(た)りて一家(いっか) 春(はる)なり 瀬戸毅義