【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2024年5月26日説教要旨
聖書箇所 ヨハネによる福音書6章1~15節
途方もない課題を前に
原田 寛
五つのパンと二匹の魚を用いて5000人以上の人々の満足する食事をしたお話です。
大勢の人がイエスの病人にされたことを見たり聞いたりして、み元に集まっていました。
場所は、ガリラヤ湖の向こう岸。人々は、船でわざわざ渡っていかなければならない場所だったでしょう。
イエスは、人々が集まってくるのをごらんになってフィリポに「この人たちに食べさせるには、どこでパンを飼えばよいだろうか」と尋ねました。フィリポは、「200デナリオン分のパンでも足りないでしょう」と応えます。1デナリオンは、労働者の1日分の賃金と考えられています。およそ200日分の給料です。そんなお金もパンも、どこにもありませんでした。アンデレが大麦のパン五つと二匹の魚を持っている少年がいますと、少年を紹介しました。何の役にも立たないでしょうと言いながら・・・。
しかし、主イエスは「人々を座らせなさい」と指示しました。そして、主はパンをとり感謝の祈りを唱えてから、パンを分けました。また、魚も同じようにしました。人々は、食べて満足した。さらには、残ったパン屑は、12のかごに一杯になったとのことです。まことに大変なことを成し遂げられたのでした。
主の御業は、ささげものと奉仕に支えられていました。少年のもっていた、五つのパンと二匹の魚がイエス様の手に委ねられました。主の感謝の祈りの後、配るようにとの指示を弟子たちは、つぶやかず疑わずに、応えて働くのでした。多くの人々の満足は、捧げた少年にも奉仕した弟子たちにも、伝わったでしょう。
70年ころ起こったユダヤ戦争においてエルサレム神殿は崩壊していました。キリスト教は、異邦人に対しても伝道がなされ、各地に実りをみていましたが、ユダヤ教とキリスト教の対立は強まりました。90年にヤムニヤで行われたユダヤ教最高会議でキリスト教はユダヤ教から追放されました。それは同時に、ローマ帝国からも非公認のレッテルが張られ、迫害の対象となりました。教会は、信じられないような大きな課題を負うことになりました。そのような中でヨハネ福音書は、記されたのでした。
この福音書の読者は、大きな課題を前に、感謝の祈りを捧げつつパンを分ける主イエスの姿を心に焼き付けたのと同時に、多くの人々を前に、主の言葉に聞き従う弟子たちを見たのです。「信じないものにならないっで、信じる者になりなさい」と語られるイエスの言葉に、聞くことが大きな業に繋がることを覚えたのです。