説教要旨2016.12.4 題:「イエス・キリストの系図」 聖書:マタイ1:1~17
牧師 岩橋 隆二
マタイによる福音書は、ユダヤ人に対して、イエスは救い主であることを伝えるために書いたものです。ユダヤ人は、非常に系図を重んじる民であり、旧約聖書にこのことがよく表れていますが、その中でも歴代誌上には、しばしば系図が出てきます。これはユダヤ人が、系図を尊んだということの一つのしるしです。ユダヤには、キリストはダビデの子孫から生れるという預言がありました。イエスが神の子であることを示すためには、その由緒を示さなければユダヤ人はイエスをキリストと信じることが出来なかったのです。そこでマタイは、最初にイエスがダビデの子孫であることを証明したのです。それは単にダビデの子孫であるだけでなく、イスラエルの始祖と言われるアブラハムにまで通じていくところの流れを持った方であることを、系図をもって証明したのです。「アブラハム」は今から四千年ほど前の族長であり、神はその子孫によって全世界を祝福する約束を与えられたことが創世記12:1~3に記されています。 時に主はアブラムに言われた、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう。あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地のすべてのやからは、あなたによって祝福される」。 イエスの誕生は、この約束の真の意味における成就であったわけです。ちなみに、世界性を強調するルカの示す系図は、人類の始祖であるアダムにまで遡っています。
この系図の中に4人の女性の名前が挙げられています。第一はタマルですが、彼女は不倫をした女であることが創世記38:18に書かれています。次にラハブですが、この人は正真正銘の遊女であることがヨシュア記6:25に出てきます。次にルツですが、彼女はひたすら家庭や夫に尽くす貞淑な女性でしたが、異邦人でした。ユダヤ人にとっては救われない者とされた異邦人が、主イエスの系図の中に入れられています。最後にウリヤの妻バテシェバですが、この女性も夫の留守中に姦淫の罪を犯しました。サムエル記下11:4にあります。以上4人の女性が出て来ますが、それぞれ問題を持っています。そういう女性をなぜ、輝かしい系図の中に入れているのか。それは、イエス・キリストによって、罪ある者も、数に入れられない者も、すべて数の中に入れられるようになったという福音が、ここに語られているのです。この系図の中に、福音そのものが証しされています。数の中に入ることのなかった人、自分が過去に犯した汚名がいつまでも消えず、その汚名の中に滅んでいかなければならないような人が、イエス・キリストのゆえに光榮ある者とされるのです。私たちは皆、数に足らない者ですが、そういう私たちがキリストの系図に入れられている。まさに、私たちがラハブであり、ルツなのです。イエス様がいてくださらなかったならば、無名の一人の女として滅んでいかなければならなかった私たちが、神様のご計画の中に一つの立場を与えられているのです。なんという幸せなことでしょうか。あなたもこの系図の中に入るのであるということが、この系図が今日の私たちに語っているメッセージです。
私たちも系図の中に入れられていることを覚えて、自分にとらわれるのではなく、その自分を救い、聖め、そして、今日の時代に用いようとしてくださる神様のゆえに、自分を大切にし、自分を見つめていく者でありたいと願います。