2015.10.4説教要旨 題:「大きな決断の促し」 聖書:エレミヤ書1:4~10
牧師 岩橋 隆二
エレミヤは紀元前650年頃、ベニヤミン族の領土にあるアナトトの祭司の子として生まれました。ベニヤミンは、かつてソロモン王死後(前922年頃)イスラエル王国が南北に分かれたとき、ユダ族と共に南のダビデ王朝に留まり、北王国がアッシリア帝国に滅ぼされた時(前722年)にも、ユダ王国として存続しました。アナトトはレビ人の町で、エルサレムから北東に約10kmにある寒村です。エレミヤの父祭司ヒルキヤは、牧畜や農業に従事しながら、人々に宗教的指導や道徳的指導を行ったと考えられます。
エレミヤが預言者として召命を受けたのは、ヨシヤ王の治世(前640~前609)の第13年(前627年)のことです。ヨシヤ王は8歳で王となり、その治世は31年に及びました。治世の13年とは、王が21歳の時です。召命を受けたエレミヤの年齢は18~23歳と推定されます。両者は、同世代だったわけです。エレミヤが活動したのは時代の転換期でした。混乱する時代のただ中にあって、国政や預言活動の責任を負う若者たちがいたのです。エレミヤの第一期の活動は、ヨシヤ王治世第18年(前622年)の宗教改革運動と重なります。ヨシヤ王により一大宗教改革が実行されました。この改革はイスラエル全土にわたり、エルサレム以外の聖所を全廃し、聖所統一を行いました。地方のすべての聖所をバアル宗教の影響で堕落したと見なし廃止する方針は、地方聖所の祭司らの強い反発を招きました。しかし、地方聖所出身のエレミヤは、預言者として改革に賛同しました。その結果、同族の者から命を狙われます。預言者エレミヤは生涯を通じて、神の民の熱狂的信仰と虚しい希望に対して否を語り続けました。彼は迫害を受け、預言者であることに苦悩しながら、その民と共に歩み続けます。預言者となったエレミヤは、国が滅び、国が起こる、戦乱のるつぼに投げ込まれて行きます。エレミヤが召命を受けた当時の世界は、アッシリア、バビロン、エジプトの三国が覇権を争っていました。しかし、過去300年の間、世界を制していたアッシリアの勢力が弱まり、エジプトも勢力が落ち、バビロンに敗れてしまいます。バビロンが全世界を支配するようになると、その勢いでユダも滅ぼされ、民は捕虜として引かれて行きました。
未来を期待することすらできなかった暗黒の時期に、神様の救いのご計画が徐々にその姿を現しました。エレミヤによる神様の救いの御業です。神様は、生まれる前からエレミヤを聖別し、国々への預言者として定めていたと言われました。これにエレミヤは、自分はまだ若いのでどう語っていいかわからないと言い、そのようなことができる者にはなれないと答えます。神様は「まだ若い、と言うな。・・・あなたに命じるすべての事を語れ。・・・恐れるな。わたしがあなたと共にいて、あなたを救い出すからだ」と励まされました。
私たちもこの世で、色んな役割が与えられることがあります。学校では何とか委員とか、地域では組長とか色んな役回りが言ってきます。教会でも役員とか教師とか色んな役割が示されます。そんなとき、自分はまだ経験不足だとか、何かと自分勝手な理由をつけて断っていないでしょうか。
神様は具体的な状況の中からご自分の働き人を召されます。時に困難な状況や希望を夢見ることの出来ない時期であっても、神様は慰めと励ましを与えられ、ご自分の良き目的のための道具として用いられるのです。