【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2023年6月18日説教要旨
聖書箇所 ルカによる福音書14章15~24節
ほんとうのお客
片山 寛
「招かれた人で、わたしの晩餐にあずかる者はひとりもないであろう」
ルカによる福音書14章15~24節
この物語は、イエスさまに対して、とある宴会の列席者のひとりが、「神の国で食事をする人は、さいわいです」と述べたところから始まります。つまり、このたとえ話で主題になっているのは、「神の国」なのです。
イエスさまの語られる神の国の物語は、いつも意外性に満ちています。私たちの常識は常にひっくりかえされるのです。思いこみは裏切られ、高ぶるものは低くされ、悲しんでいる者は慰められます。
以下に御紹介する小さな物語は、ジョン・ウェスレーの見た小さな夢の話です。ウェスレーは英国教会司祭の息子に生まれ、自身も英国教会司祭となり、生涯その地位にありました。名説教家として有名で、イギリスとアメリカで巡回伝道をし、生涯で4万回もの説教をしました。国教会司祭でありながら、彼は国教会のあり方に批判的で、メソジズムと呼ばれる信徒運動を指導して、カトリックや英国教会を批判しました。この運動はやがて、ウェスレーの死後にメソジスト教会として独立するに到ります。バプテストとは近い関係の教派です。
メソジスト教会の創始者ジョン・ウェスレー(1707-1788) は、こんな夢を見たと言われる。彼は地獄の門にさしかかって、門番にたずねた。「この中には一体どんな人々が入っているのだね、カトリックはどうだい」。すると門番は答えた。「ええ、大勢」。「すると (英国) 国教会の連中もだね」。「ええ、大勢」。「ルター派は、改革派は、バプテストは、長老派は、正教会は」。門番の答えはすべて同だった。「ええ、大勢」。「それじゃあ、メソジストはどんなもんだろう」。「ええ、大勢」。
ウェスレーはがっかりして立ち去り、今度は天国の門に来て、門番に同じ質問をした。「ここにはカトリックはいるかい」。「いいえ一人も」。「国教会の連中は」。「いいえ一人も」。「ルター派は、改革派は、バプテストは……」。答えはそのつど同じだった。「いいえ一人も」。ウェスレーは最後に、ためらいがちにたずねた。「メソジストはどうだろう」。「いいえ一人も」。ウェスレーは驚いてたずねた。「それじゃあ一体、どんな方々が天国に入っておられるのだろう」。門番は笑って答えた。「ここにいるのはみんな、クリスチャンだというだけですよ」。
Kursgeschichten III, 74