【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2025年4月6日説教要旨
聖書箇所 ルカによる福音書22章24~30節
一番偉い人
原田 寛
ルカ福音書の中で、ルカは、一番偉い人は食卓の給仕役のように仕える者でなければならないという教えを、最後の晩餐の会食中に位置付けています。マタイ福音書とマルコ福音書にはないことです。「一番偉い人」というお話は、ルカ9章46節以下にもでてまいります。
使徒たちは、お互いに「だれが一番偉いか」と議論しました。おそらくは、使徒たちの関心が三度も予告された主イエスの十字架の死(9章21節以下、9章44節以下、18章31節以下)よりも、世の終わりが近いことや御子イエスが中心となった神の国の到来への期待が膨らんで、このような議論が起こったのでしょう。
主イエスの時代の「一番偉い者」は、政治的社会的にローマ皇帝を指すでしょう。ユダヤ人的には、神殿及び最高法院(サンヒドリン)の代表となる大祭司になるでしょう。ローマ総督や領主ヘロデも存在します。メシアは、パレスチナの複雑な事情を覆し、真の神の国をこの世に実現するものであり、主イエスに対する使徒たちの期待(「だれが主の右と左に座るのか」マタイ20章20節以下)が大きかったのはいうまでもありません。
最期の晩餐時、いよいよその直後十字架への時を迎えるその場面で、ルカは「一番偉い者」という話を伝える。ルカは、パウロに同行した医師です(使徒16章以降「わたしたち」の語句、フィレモン24、第二テモテ4章11節、コロサイ4章14節)。パウロに差し迫った様々なことを共に経験して来ました(第二コリント11章23節以下)。そして、パウロが記した書簡などにも接して、差し迫った時に重要なことを学びとった。それは、「愛すること」「仕える」ことだったのです。
主イエスは、『食事の席に着く人と給仕する人とどちらが偉いか』と問うた。偉い人は食事に着く人だが、主は自らを『給仕する者』だと説明する。給仕する者は、食事する者たちの様子を観察し、必要な事柄に心配りをして、食事する者たちを満足させる者です。そのように仕えるのです。主イエスは、人に命を得させるために、十字架の死に至るまで従順に仕える者であられたのです。その方が、「父がわたしに支配権をゆだねてくださったように、わたしもあなたがたに・・・」と言いつつ食事を共にし、人々を治める者となると預言しておられるのです。
一番偉いのはだれか。それは、父なる神に従順ですべての人の救いのために仕えられた御子イエス・キリストではないか。