【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2025年7月6日説教要旨
聖書箇所 ローマの信徒への手紙8章26~28節
万事が益となる
原田 寛
「万事が益となる」というお話は、創世記37章から展開するヨセフ物語が有名です。これは、ヤコブとヨセフの成功物語ではなく、神の存在を表す救いの物語です。ヨセフは12人兄弟の11男です。ヨセフは、17歳の時に、ふたつの夢を見ます。その夢は神の計画のはじまりでした。おそらくは、ヨセフ自身も、自分の人生を通じて、神が世界の救いを見せるということは考えていなかったでしょう。ヨセフは、兄弟によってミディアンの隊商に奴隷として売られ、エジプト・ファラオの親衛隊長ポティファルの家に入ります。そして、ポティファルの信頼を得て財産管理を託されますが、ポティファルの妻によって投獄されてしまいます。投獄中にファラオの献酌官と料理人の夢説きを行ったことをきっかけに、ファラオが見た夢を説いて、7年の豊作と7年の飢饉が到来することを示しました。 ヨセフは、このことをきっかけにファラオの絶大な信頼を得てエジプトの宰相となり、飢饉に苦しむ世界の人々を救い、さらには、神が選んだヤコブとその家族を、エジプトの最良の地ゴシェンに迎えることができたのです。これは、神に選ばれた人々に対する神の救いの物語なのです。神の救いの計画は開示されていません。ヤコブにもヨセフと11人の兄弟たちにもです。神は、神ご自身を明らかにするためにかねてより選んでいたヤコブとその家族を用いたのです。
パウロは、エフェソの信徒への手紙で、聖霊によって秘められていた神の計画が明らかにされたと伝えます。それは、異邦人もイエス・キリストによって神の国の約束に預かる者となるというものでした。聖霊は、自分自身の将来のことを見通すことのできない私たちの弱さを知って助けてくださいます。何をどのように祈ったらよいかわからない私たちの思いもまた、執り成してくださいます。だから、そのような聖霊の働きを知るならば、どんな時も信仰を貫いていきたい。そうすると、神を愛する者たち、御計画に従って召された者には、万事が共に働いて益となるということです。
コヘレトがいうように「神はすべてを時に適ってうるわしく造り、永遠を思う思いを人の心に与えた。だが、神の行った業を人は初めから終わりまで見極めることはできない」。私たちは神のなさることを知り尽くすことはできないでしょう。しかし、信じ、神のなさることに参加することができる。今まさに、それを「教会の業」としてイエス・キリストが示してくださった愛に根差して実行しています。それは、新たに「益」となっていくことです。