【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2022年4月17日説教要旨
聖書箇所 マルコによる福音書16章1-8節
復活―前代未聞の出来事
片山 寛
和白バプテスト教会協力牧師
(元西南学院大学神学部教授)
復活祭(イースター)おめでとうございます。
復活は、私たちにとって前代未聞の出来事です。2000年前にそうだったのと同じく、今でも私たちは「復活」を知りません。知らないままに、私たちの想像力を超えた神さまの出来事を信じているのです。それは、終末における万物復興の「先取り」prolepsisなのです。
そのことを物語った小さな寓話を御紹介します。トンボの幼虫は「ヤゴ」と言って、水中に2、3年暮らしていますが、トンボとは似ても似つかない姿形をしています。これは、ヤゴと、同じ池に住んでいる血吸蛭のお話です。
ヤゴと血吸蛭
小さな池に、空へのあこがれと、新鮮な空気を吸いたい衝動を抑えきれないでいるヤゴと、血吸蛭が暮らしていました。蛭が言いました。「君が天上の空気と呼んでいるものへの要求ってどういうことかね」。ヤゴが答えました。「うん、ぼくはいつからか、上への憧れを持っているんだ。ぼくはじっさい一度、水面のところで、その上にあるものを見ようとしてみたことがある。ぼくに見えたのは、明るい光と、ぼくの上をかすめて飛び過ぎる不思議な影だった。でも僕の目は、池の上にあるものを見るには向いていないに違いない。それでもぼくはそれを知りたいのだ」。蛭は身体をくねらせて笑いました。「ああ、夢見る魂よ、君は池の上にまだ何かあると思っているんだね。でもそんな幻は捨てろ。ぼくを経験者として信頼しろ。ぼくは池じゅうくまなく泳いだ。この池は世界だ。そして世界はこの池なのだ。その外には何もない」。ヤゴは言いました。「でもぼくは光を見た。それから何かの影も」。「空想の産物さ。感じて、触れることのできるもの、それこそが現実なのだ」、と蛭は答えました。
けれども、それから何日もたたないうちに、ヤゴは羽化して、水から飛び立つ時が来ました。羽根が生え、金色の太陽の輝きと青い空の光がその羽根をぴんと伸ばしました。そして彼はほのかに光りながら宙に浮かび、池の上をゆっくりと飛びました。
Kurzgeschichten, 1, 55