【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2022年1月2日 説教要旨
聖書箇所 へブル 11:6-10
確証のない旅
瀬戸毅義
今朝は2022年の最初の礼拝です。元日の新聞は頁数も多く特別版です。どの新聞でも今年はこうなる、今年の予想などとして特集を組んでいます。しかしそういう予想は大抵あたらないものではないでしょうか。新年を新しい旅の出発とすれば、言えることはその旅には確証が無いないということです。11章は信仰に依り頼んだ旧約聖書の有名な人物が記されていますが、それぞれの人物は私たちに信仰とは何かを教えているのです。
例えばアブラハムは従順な信仰の大切さを教えています。「信仰によって、アブラハムは、受け継ぐべき地に出て行けとの召しをこうむった時、それに従い、行く先を知らないで出て行った」とあります(8節)。アブラハムは保障があって出発したのではありません。旅には不確実さが伴います。冒険が伴います。勇気も必要です。沈着さも求められます。これらの信仰の偉人は、無謀な行為をしたのでしょうか。そうではありません。これらの人物の心の奥底にはどっしりとした神への信仰がありました。共にいてくださる神への深い信頼がありました。不確実であっても神の言葉はいつでも確かです。揺らぐことはありません。
新しい旅には、必ず不安があります。冒険心がもとめられます。しかし旅だけではありません。人生にはそういうことがたくさんあります。例えば結婚はどうでしょうか。女性が子供を産むときはどうでしょうか。学生が学校を卒業して就職するときはどうでしょうか。サラリーマン生活に区切りをつけ独立をするときはどうでしょうか。このような時は、人は大きな決断をして勇気を持って出発をするのです。私は南部バプテスト神学校を1980年に卒業しました。その卒業式はコメンスメント(commencement)といいます。コメンスメントには開始、始まり、初めという意味があります。卒業は終りではありません。これから新しい歩みが始まるのです。
アブラハム(このころの名前はアブラムでした)は神のことばに従いました。彼に子供はいませんでした。彼は遊牧民でした。遊牧民は食物や牧草地をさがしながら住居を移します。そういう生活です。
彼は今までの生活の便利なところ、いわば当時の文明圏を離れます。ユウフラテス川をわたりまだ見ぬはるか遠方のカナンの地(現在のパレスチナ)をめざして長い旅にでるのです。
遊牧民の生活は楽ではありません。羊の群れを一つの場所から次の場所へと移さねばなりません。羊をねらう野獣とたたかわねばなりません。そのほか敵意を持っているまわりの人々とぶつかることもあります。その時は、起きた争いを解決しなければなりません。アブラハムには、先頭に立って皆を統率する能力がありました。人をまとめて先導する人望がありました。何よりも困難なことをやり抜くための信仰がありました。
拙宅の小さな庭に雀がよくやってきます。時々のパンくずが目当てなのかもしれません。雀を見るといつも聖書の言葉を思いだします。「二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない」(マタイ10:29)日常のことに一喜一憂している自分が恥ずかしくなるときがあります。新しい年も神が共にいてくださるのだと知れば感謝です。
新しい出発に際し神はヨシュアに励ましの言葉を与えられました。これは私たちへの激励の言葉でもあります。
一生の間、あなたの行く手に立ちはだかる者はないであろう。わたしはモーセと共にいたように、あなたと共にいる。あなたを見放すことも、見捨てることもない。 強く、雄々しくあれ。あなたは、わたしが先祖たちに与えると誓った土地を、この民に継がせる者である。 ただ、強く、大いに雄々しくあって、わたしの僕モーセが命じた律法をすべて忠実に守り、右にも左にもそれてはならない。そうすれば、あなたはどこに行っても成功する(ヨシア記1:5-7 新共同訳)。
吼えよ夜の風
ヘンリー・キルク・ホワイト
神の大命なしに
なんじは山の松の木に
すずめのねぐらを乱すあたわず
Howl, winds of night! your force combine.
Without His high behest,
Ye shall not, in the mountain pine,
Disturb the sparrow’s nest.
Henry Kirk White
私(内村鑑三)はまだこの青年詩人の(彼は二十一歳でこの世をさった)の作を読んでいない。しかし簡単な彼の伝記と、この一小篇とは、彼をわたくしの永久の友としました。これは、マタイ伝第10章29節の「二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない」とのキリストの言葉を述べたものである。彼ホワイトは若い頃より、懐疑の風に襲われ、信仰上彼の立脚の地を失おうとした時、この述懐があって、大いに慰安を得たといいます。哲理的に神を疑いながら心霊的に彼にたよるという状態を述べたものとして、わたくしはまだこのような優れた作が他にあるのを知りません。
出典:内村鑑三『愛吟』