【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2022年10月16日説教要旨
聖書箇所 マタイによる福音書22章34-40節
自分を愛するように?
片山 寛
「自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ」と聖書は命じています。これはとても難しいことです。ほとんど人間には不可能と言ってもいい。わが身可愛さのあまり、他者を傷つけたり利用したりする人はいくらでもいますが、他者を助けるために自分をいくらかでも犠牲にする人はほとんどいません。
しかしどうもよく考えると、私たちの考える「自己愛」というものは、本当の意味で「自分自身」を大切にはしていないようなのです。
善き者たちの在り方
南インドの或る村に一本の巨木があります。どれだけ古い木なのか誰も知りません。この巨木の名はアンママーラム、つまり母なる木と言い、そこには一人の人間が坐れるぐらいの空洞が隠されています。次のような伝説があります。はるかな昔、この空洞に一人の賢人が住んでいました。賢人はこの木の実しか口にせず、この木の樹皮を衣服として身につけていました。賢人が亡くなったあと、人々は彼が着ていた樹皮に、次のような言葉が書いてあるのを発見しました。
樹木自身は自分の甘い実を食べることはしない。
川は自分自身の水を飲むことはしない。
そして雲は自分自身のために雨を降らせることはない。
善き者たちの力は、他の者の必要に仕えるのだ。
Kurzgeschichten III, 111.