2019年12月24日 クリスマスイヴ礼拝説教要旨
聖書箇所 マタイによる福音書 1章18節~25節
清楚なクリスマス
瀬戸 毅義
クリスマスは英語でキリスト Christ のミサ mass の意味。Xmasと書く場合の X は,ギリシア語のキリスト(クリストス)ΧΡΙΣΤΟΣ の第1字を用いた書き方です。クリスマスを日本では Xmas と書くことが多くありますが、この形は英米ではポスターなど以外では避ける傾向があります。
フランスではノエル Noël,イタリアではナターレNatale,ドイツではヴァイナハテン Weihnachten。12月25日をクリスマス・デー、その前夜をクリスマス・イブといいます。12 月 24 日から 1 月 1 日まで、 特に、 英国では 1 月 6 日の公現祭の祝日 (Epiphany) までのクリスマスの季節を降誕節( Christmastide)といいます(Yuletideとも)。
学問的研究(歴史的・批判的研究)によればイエス・キリストの誕生を、現代の私たちは正確に書くことはできません。確かなことは、イエスはヘロデ大王(前4没)の晩年に僻地ガリラヤのナザレ(ベツレヘムではなく)で生まれ、そこで成長されたということです。ベツレヘムとされたのは旧約聖書ミカ書が背景にあるとのこと。そこはダビデの町であり、イスラエルを治めるもの(救い主)が生まれると預言されているからです(ミカ5:2)。
人を救う救い主の誕生は極めて貧しく厳しいものでした。場所はローマの帝都でも、聖都エルサレムでもなく、ユダヤの寒村ナザレの貧しい家畜小屋でした。
その日は実のところ12月25日ではありません。12月25日と決定するまでにさまざまな意見がありました。たとえば,12月末は,イエスの生まれたパレスティナ地方では雨季にあたり,羊飼いは野に出ていないのです。12月25日はローマの冬至の日「征服されることなき太陽の誕生日」でした。当時,キリスト教徒の間にもイエスをこの世の光,太陽と考える習慣があり、クリスマスが12月25日となりました。本格的に祝われるようになるのは教皇ユリウス1世(在位337‐352)のときからです。クリスマス・ツリー,サンタ・クロース,クリスマス・カード、クリスマス・キャロル、クリスマス・プレゼントなどは、英国では19世紀中葉、ビクトリヤ時代から始まりました。3世紀の神学者オリゲネスはクリスマスを異教的であると非難しています。英国史の中では,謹厳なピューリタンはこの日をローマ・カトリックの祝日として非難し,暴飲、暴食,ダンス,かけ事,乱痴気騒ぎその他の諸悪に結びつく日として攻撃しています。
日本では クリスマスの風習は明治以降に広まりました。明治10年/1870年代に丸善がクリスマス用品を輸入し,このころから大正期/1912年以降,クリスマスはだんだん一般家庭でも祝われるようになり、徐々に商店の歳末売出しに利用されました。このようにクリスマスのさまざまの飾りなどは聖書に書かれているのでありません。北欧や英米諸国などから来たものです。
私は現代の7不思議というものがあれば、その第1は日本のクリスマスだと思います。
理由はあまりにも聖書とかけ離れているからです。NHKの番組に「クール・ジャパン」があります。私はよく見ます。発言者は外国人です。彼らがどうしても理解できないことは、日本ではクリスマスが「恋人の日」となっていることだといいます。何と恥ずかしく愚かなことでしょうか。教会の責任も大きいと思います。何とかして人々を教会に呼び込もうとして聖書の教えとは違ったクリスマス的キリスト教?を広めたからです。はっきりと教会はクリスマスの意味を伝えるべきでした。
大切なことはクリスマスの意味を知ることです。
聖書に、「神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。」(ヨハネ3:16)とあります。ある英語聖書にはこうあります。
For God so loved the world that he gave his only begotten Son, that whosoever believes in him should not perish but have eternal life. John3:16 Jubilee Bible 2000
神は私たちを愛してその独り子をこの世に賜ってくださいました。私たちも深く広く世の中の人を愛すべきではないでしょうか。聖書に「愛さない者は、神を知らない。神は愛である。」(ヨハネ第1 4:8)とあります。
クリスマス(ご降誕記念日)の意味はここにあります。
イエス様は成人されて、その頃の政治的・宗教的指導者たちにより〈地の民〉あるいは〈罪人〉として差別され、交際を禁じられていた人々と付き合われました。身体障がい者や精神障がい者、ハンセン病の患者たちと、律法を犯してまでも交際なさいました。自分から彼らの一人となろうとしました。彼らの病気や障がいを癒やそうとしました。
イエス・キリストの誕生は実に貧しく、ご家族も清楚・質素でした。
イエス・キリスト様を、皆さんの心の中にお迎えなさってください。貧しい家畜小屋にお生まれなさったイエス様、罪や病、苦しみや差別に泣く人を救うためにご自分の命を十字架の上に捨てられたイエス様を今晩皆さんの心に、どうぞお迎えになられてください。
皆さんの新しい人生の出発があります。そのことを心よりお祈りいたします。
絵はオランダの画家・版画家レンブラントのものです。レンブラント(Rembrandt Harmenszoon van Rijn/1606-69)はオランダの画家・版画家でした。微妙な明暗と色彩で、人間の精神への深い洞察を描きました。この絵の題は『カーテンのかかった聖家族』(The Holy Family with a Curtain )です。Oil on wood, 46,5 x 69 cm、1646年。
「いい絵だなー」と思いませんか。
イエスの父ヨセフは大工さんでしたが、ここでは疲れているように描かれています(右下の方)。ヨセフの背中も曲がり加減です。言い伝えによれば、イエスの父は早く亡くなられたようです。当時の大工さんの仕事は、生活も貧しく指物師的なこともしたようです。レンブラントの絵では、幼児イエスも母マリアも特に神格化されていません。また光輪(halo)などもありません。光輪はキリスト教芸術で聖人や神的人格を象徴するために頭の周囲に描いた輪です。(イヴ礼拝のプログラムと共に配布したもの)