【聖書箇所朗読・説教音声ファイル】
2023年10月15日説教要旨
聖書箇所 マタイによる福音書6章25~34節
野の花、空の鳥
片山 寛
野の花は、働きもせず、紡ぎもしない。しかし栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾っていなかった。――この物語は、あくせく働くことはない、と言っているのでしょうか。いろいろ努力することはやめて、楽しいことだけすればいい、というのでしょうか。私にはそうは思えません。野の花や空の鳥でも、彼らなりの悩みや苦しみはあるはずだからです。寒い冬に、空腹のまま眠るという経験は、彼らにもあるはずです。むしろこの物語が言いたいのは、本当に大事なことを大事にしなさい、ということだと思うのです。「何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい」(33節)。
次のような物語があります。
小さな木と小鳥の物語
あるとき、大地から小さな植物の芽が顔を出した。その芽は光と空気をとても喜んで、力いっぱい成長して、徐々に徐々に大きくなっていった。いつの間にかそこには柔らかな枝と葉っぱをそなえた、小さいがすばらしく美しい緑の木があった。
ある日、その小さな木は、悲しげに葉を垂れ、小さな枝も地面に低く垂れ下がらせていた。
一羽の小鳥が、このあたりでいつも樹木の枝で歌を歌っていたのだが、これに気づいて、枝に止まってこの若い木に尋ねた。「どうかしたのかい?」
「ああ」と言って木は嘆いた。「ぼくはもうこれ以上成長したくないのだ。ぼくの周囲の美しい大きな元気な樹木を見、彼らの力強い枝が青い空に向って伸びているのを見ていると、ぼくは思うのだ。ぼくは決してこんなにはなれない。」
小鳥はしなやかな枝の上で、すこしの間からだを揺すっていた。それから言った。
「君は忍耐が必要だ。毎日、君は沢山の太陽と雨と風を必要なだけもらっている。そのことを受け容れ、満足するんだ。その他のことはすべて、おのずからわかるようになるよ。」
Kurzgeschichten III, 169.