【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2022年9月18日説教要旨
聖書箇所 ルカによる福音書17章11-19節
十人の病人―十人のうちの一人
片山 寛
「招かれる者は多いが、選ばれる者は少ない」(マタイ22章14節)と、イエス・キリストは言われました。この言葉は伝統的に、クリスチャンの中でも、救われて天国にまで行けるのはわずかな人間だけだ、というように厳しく解釈されてきました。
宗教改革者ジャン・カルヴァンは、その比率は大体10分の1ぐらいだと考えていたように思います。もちろんその10分の1という数字に確証があるわけではありません。そもそも救いということは神さまの専権事項ですので、人間が推し量ることはそれ自体が罪であることを、カルヴァンは知っていました。そしてもちろん彼は、ジュネーヴ教会の牧師として、少しでも多くの教会員が天国に入れるよう日夜祈っていました。しかし実際にはそれは難しいだろうとも彼は考えていました。クリスチャンでも十人に一人ぐらいしか、本当の信仰者はいない。……しかし私は、この点では、カルヴァンのペシミズム(悲観主義)には反対です。神さまはもっとおおらかな方であるような気がするのです。
次のような物語があります。この中に出てくる「アルスの司祭」とは、フランスの小さな村アルスの司祭として35年間働いた、ジャン=マリー・ヴィアンネ神父1786-1859のことです。彼は人口230人の小さな村の司祭でしたが、多いときには1年に2万人もの人々が、神父から助言をもらうために、この小さな村に、フランスじゅうから巡礼に来ました。
神さまへと救助される
アルスの司祭のもとに、あるとき、深い疑いにとりつかれた女性が訪ねてきました。「私の夫は橋から川に転落して、死んでしまいました。夫は地獄に行ったのではないでしょうか。」アルスの司祭は、彼女に言いました。「奥さん、神さまのお恵みにとっては、橋から落ちて水の中に沈むまでの時間は、十分余裕がある時間ですよ。旦那さまは神さまへと救助されたのです。」
Kurzgeschichten III, 239