僕は「雪」なるものを初めて見た。白いものが空からふわりふわりと空から舞ってくるのを不思議そうに見ていると、牧師さんが近づき僕の頭を撫でながらこれは「綿雪」と言うんだよと教えてくれた。次の日には、僕を抱いて庭に連れだし雪の塊を触れさせてくれた。冷たくて匂いも無く、僕にとって興味あるものではなかった。それにしても僕の父親でもある牧師さんは、僕の成長の為に労を惜しまず何でも経験させてくれる。
このところ夜の寒さが厳しいので牧師さんの布団に潜り込み、しっかりと身を寄せて寝ている。少し腰痛持ちの牧師さんは最近見たテレビ番組で、「腰の痛みは寝返りが多いほど改善される」ということを知り頻繁に寝返りをするようになった。その為に僕は多少迷惑している。というのは、僕は夜寝る時は牧師さんの胸に触れるところにいるので、寝返りをされるとその度に反対側に移動しなければならないのだ。でも優しい牧師さんはその都度、僕の背中を撫で安心させてくれる。
一週間程前、弟の飼い主さんが尋ねて来て久しぶりに僕を見て「この子ハンサムだねー」と嬉しいことを言ってくれた。聞くところによると昨年の7月31日に僕ら3兄弟が教会に置き去りにされた時、そこに居合わせた猫博士の木下澄子さんが僅か200~300gの僕を掌に乗せ、「この子は良い顔してるわね、美男子になるよ」と既に予告していたそうだ。僕は自分ではハンサムかどうか分からないけど、そう言われて悪い気はしないよ。でも見かけよりも中身が大事だと思っている。だって牧師さんが、いつも変わらぬ心の優しさが一番大事だと言っているもの。
1月20日は牧師さんの74歳の誕生日だった。親孝行の息子の卓哉さんが誕生祝いに立派な鰻を送ってくれて、お陰で僕もご相伴に与った。蒲焼の余りにも香ばしい匂いにこれはただ事ではないと食卓の牧師さんの横にへばりついていると、「こんな美味しい鰻は滅多に食べられないんだよ」と言って僕にもちゃんと分け前をくれた。まぐろ缶詰の10倍位美味しかったな。卓哉兄さんありがとう。それに、卓哉さんのお嫁さんの澄香姉さんがいつも気遣ってくれていると牧師さんと奥さんが感謝しているけど、僕も側で見ていて本当にそうだと思う。澄香さんがわざわざ用意してくれた上等のケーキを僕も戴きました。健康の為に少ししか食べれなかったけれど、とても美味しかった。ありがとう。
僕には苦手なことが二つある。一つは掃除機だ。一週間に二度ほどあの何とも嫌な音が始まると、僕は2階寝室の押し入れに避難するようにしている。もう自分で襖を開けることが出来るので、布団が収納されている押し入れの上段に逃れ、ひたすら忍耐している。掃除機をかけながら牧師さんは、僕が逃れている押し入れに近づくといつも「チー坊、恐がらなくてもいいんだよ」と言ってくれるがなぜか嫌だ。もう一つの苦手は訪問客だ。僕は極度のシャイだから、玄関の「ピンポーン」が鳴っただけで怯えてしまう。だからこよなく猫を愛する卓哉さん・澄香さん夫妻は、僕に気遣ってこっそり訪れる。いつも美味しい食べ物を持ってきてくれる卓哉さん夫妻に愛されるように努力するよ。慣れるまでもう少し時間がかかるかな。嫌わないで待っててね。奄美のお母さんもホームページの僕の記事を楽しみにしているとのことで、不束者ですがどうぞよろしくお願いします。皆さま、寒い日が続きますがお身体を大切に。