【聖書箇所朗読】
【説教音声ファイル】
2018年11月4日説教要旨
聖書箇所 ローマ人への手紙1章16節~17節
我等の神は堅き城なり
瀬戸毅義
先月の10月31日は宗教改革記念日でした。私たちプロテスタント教会が忘れてはならない人物、マーチン・ルター(Martin Luther/1483~1546)を覚える日でした。彼はドイツの宗教改革者として歴史に名を残しました。1517(永正)年、免罪符濫(らん)売を憤りその基礎にある従来の善行観を根底から批判する95カ条の論題を公表、結果教皇の破門を蒙(こうむ)りました。こうして宗教改革の端は開かれました。救いは行いによらず信仰のみによると説きました。1522年聖書のドイツ語訳を行ったことは有名です。また自らいくつもの讃美歌を作りました。以下は彼が作詞作曲した有名な讃美歌「神はわがやぐら」(教団讃美歌267番、新生讃美歌538番)です。内村鑑三の訳を以下に掲げます。ルターの力強い信仰を感じます。また内村鑑三の訳からは日本語の美しさも感じるように思います。
ルーテル ―内村鑑三訳―
堅き城は我等の神なり、
彼は拠るべき塞堡(とりで)なり、
我等に臨みし凡ての悪より、
彼は美事に我等を救はん、
夫(か)の古(いにしえ)よりの悪しき者は、
今は猛威を悉(つ)くして立てり、
政権を以て装(よそほ)ひ、
邪曲の計を施(めぐ)らす、
世に彼に当る者なし。
註、「夫の古よりの悪しき者」Der altböse Feind, 悪魔なり、政権に頼り、邪計を施らし、志士を弾圧す、古今東西変わることなし。
若(も)し我等の力に頼らば
我等は直に失はれむ、
然れど一人の聖き者の
我等の為に戦ふあり、
彼(かれ)何人と尋ぬる乎、
イェスキリスト其人なり、
サバオスの神に在して、
彼の他に神あるなし、
彼我等と共に戦ふ。
註、「サバオスの神」(Der Herr Zebaoth)、「万軍の主」の意、キリスト崇拝、「新神学者」の嘲弄物、貧叟博士の哲学的(?)戯談の好題目、然れどマルチン、ルーテルの宗教。
たとへ悪魔は世界に充ちて、
我等を呑まんと企つるも、
我等は少しも心に留めじ、
彼は我等に勝つ能はず、
此地に權を握る者は、
如何に苛立(いらだち)騷ぐとも、
我等に害を加ふるを得じ、
彼の運命は已(すで)に定まれり、
一言以て彼を殺すべし、
註、「此地に権を握る者」。Der Fürst dieser Welt、魔王なり、改革者の一言に急所を刺されて憤恚(ふんい)するの族。
神の勅命(みのり)は已(すで)に降(くだ)れり、
是(これ)を毀(こぼ)つの権威(ちから)あるなし、
彼は我等の味方なり、
力と霊とを我等に給ふ、
我等の生命(いのち)を奪ふも可(よ)し、
我等の名誉を毀(こぼ)つも可し
財(たから)も妻も子も与へん、
然れど彼等は何も得じ、
神の聖国(みくに)は竟(つい)に仆(たお)れず、
註、「彼等」Sie haben’s kein Gewinn、魔族を云ふ、義人を殺して勝てりと信ずる類(たぐひ)。
出典。内村鑑三『愛吟』、1897(明治30)年7月 内村鑑三全集4。