イザヤの預言活動は40数年におよび、ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの4王の時代にまたがっています。彼の時代のユダ王国は、アッシリヤ帝国とエジプトの2大強国が世界支配を求めて激しく対立し、パレスチナの他の国々と共に、その争いの渦の中に巻き込まれます。その間、ユダ王国は、2大強国の間に立ってたえず動揺し、どちらかの力に依存して国を護ろうとする政策がなされました。一方、国内的には、道徳的堕落・不信仰が広がり、イザヤはこれを強く批判しました。
あるとき、イザヤは幻を見ました。辺り一面、どこを見ても切り倒された大木の切り株だらけです。すると、ある切り株からひとつの小さな芽がスッと芽生えたではありませんか。その小さな芽は、やがて凛とした若枝に育ちました。その若枝のうえに、神様のことばに聞き従う霊が宿ったのです。この幻を見たイザヤは、新しい王がまっすぐ神さまに聞き従って国をまとめていくことを期待しました。そこで、イザヤはその都度、王に神さまの御心を伝え続けるのです。でも、現実の王には落胆します。王は目に見えない神さまよりも、目に見える力に頼って軍隊を強くしたり、強い国とくっつくことで自分たちの身を守ろうとします。そんな中で、弱い立場の人たちや貧しい人たちが真っ先に、平和な生活を奪われていくのでした。
イザヤはまた幻を見ました。目の前に、羊や山羊が群れをなす牧場が広がっています。そこへ狼と豹が現れました。そこでは何と狼、小羊、豹、子山羊が仲良く地に伏して憩っているではありませんか。あちらでは、子牛とライオンが、こっちでは牛と熊が一緒です。それらを導いているのは何と幼子! イザヤの耳に神さまの声が聴こえてきます。「わたしの聖なる山では、誰も滅ぼされることはありません。その日が来ればこのようになります。切り株から育った若枝に、世界中の人々が集まってくるのです」。 木々が切り倒され、かつて豊かな森だった所が、切り株だけになってしまった。それは国土や人心があれはてて、すさんだ光景です。しかし、そこから神の救済の預言がはじまります。命が途絶えてしまったかのような切り株から一つの芽が芽生え、それが成長して若枝となる、神による命の再生と、荒廃からの救いのイメージがそこにはあります。一人の新しい王が、奇跡的に立てられるという預言です。
イザヤはヒゼキヤ王にも失望します。イザヤは、眼前の王を超えたメシアの存在を指し示して証言します。なんとそこでは、「狼と子羊」「豹と子山羊」「乳飲み子と毒蛇」という、私たちの常識では到底考えられないような、敵対者の間に平和と共生の関係が成り立つというのです。イザヤの預言は700年後に、イエス・キリストの誕生によって成就しました。私たちはそのイエス・キリストを主と信じ、心平安の元に生かされています。人間がなす平和は、だれかを損なう平和でしかありません。真の平和は神さまによって実現するほかありません。「主を知る知識」が世界をおおうように、私たち一人一人が神さまの言葉を伝え続けていくことが、私たちの具体的な平和の歩みです。
2014.10.19説教要旨 牧師 岩橋 隆二